第48回衆議院選挙は選挙前から大荒れでした。
しかし、フタを開けてみると自民党と公明党が大勝してより政策が進めやすくなりましたね。
そこで、今回私が注目したのが自民党と公明党が選挙前に掲げた公約の「教育無償化」です。
安倍首相はこの「教育無償化」などを総計2兆円の政策パッケージを年内に取りまとめるとしています。

引用:https://cdn.images-dot.com/S2000/upload/2017101200091_1.jpg
皆さんもこれを聞いて疑問点が多くあると思います。
はっきり言って、教育無償化を年内に取りまとめるのは不可能に近いと私は思います。
そして、仮に無償化できたとしてもその財源をどこから引っ張ってくるのかと言う問題に直面します。
私の予想では、この問題を年内に取りまとめると公言してしまったためどこかでやらなければならなくなりました。
そこで私なりに考えた結果、「一部無償化」を年内中に取りまとめるのではないかと思いました。
例えば、「子供が○○未満の母子家庭で収入が○○以下の場合は教育に関して全て無償にする」
これならば公約は一応達成しており、財源もそこまで必要ではありません。
2017年10月27日に自民公明は会合を開き早速今回の教育無償化について議論を開始しました。
人づくり革命担当相の茂木敏充さんはこのように育児教育や保育無償化の意義を語っています。
「幼児教育は極めて重要だ。単に知識とか認知能力を身につけるだけではない。子どもにとって将来必要な能力を養う」
このコメントはごもっともであり、調べてみると良質な幼児教育は犯罪の減少や将来の所得の増大につながるという国際的な研究報告があり近年ではとても注目されており重要性が増しているそうです。
しかし、それは国際的な見解であり、国際社会を見てみると多くの国では未だに学校へも通えない子供たちが大勢います。
それに比べて日本では3歳~5歳の9割以上は保育所や幼稚園に通っているのが現状であり、小学校や中学校へ通えていないという子供はそういないのが現実です。
それを考えると社会的な効果は限定的であると私は考えます。
日本の貧富の差が拡大しており、貧困家庭が多くなっているとは言っても教育が受けられない子供はいないはずです。
どの年代まで無償化されるかにもよりますが、いきなり高校や大学まで無償化することは財源的に不可能です。
一部だけ無償化したところで経済に良い影響を与えるとは私は考えられません。
教育無償化する意義や意味は?財源確保はどこから?

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そこまでして、なぜ教育無償化を早めようとしているのでしょうか。
内閣府の担当の方はこのように話しているそうです。
「子どもの数を理想の数より抑えている理由で『お金がかかりすぎる』が7~8割を占める。家計を圧迫しているのが重要なポイントだ」
貧困が深刻化しており、子供が育てられないという理由から子供を作ることを制限している家庭は多くいると思います。
しかし、今の財源などの現状から一部の教育無償化をしただけでは改善できないのではないでしょうか。
これが、「大学まで教育無償化」となれば子供を作る家庭は増加すると思います。

引用:http://livedoor.blogimg.jp/sekkachipapa/imgs/0/8/08736e87.png
簡単に計算したところ一番お金がかからないように大学まで進学したとしても1人当たり約3000万円かかります。
この負担が無くなると言うことですので、子供を授かっても余裕を持って育てることが可能ですよね。
当初から教育無償化の財源はどこから引っ張ってくるのかと言う議論がありましたが、政府は消費税を10%に引き上げた際の財源を使用すると説明しています。
当初、消費増税での財源の2兆円のうち1.7兆円は国の借金を減らすために使用するという方針でしたが、それを変更する形になります。
当然ながらこの方針は批判が多く寄せられています。
「後の世代へのつけ回しだ」
「国の借金ではなく、安定的な税財源で賄うことだ」
ごもっともな意見ですし当然のことだと思います。
しかし、安定財源とは一体どこにあるのでしょうか?
また、消費増税は2019年の予定です。
安倍首相の年内教育無償化の財源はどこから使うのか私は疑問に思いました。
教育無償化の恩恵はどこ?問題点は?低所得者ではなく中高所得層に恩恵?
無償化にともないどれだけ恩恵が受けられるのか気になるところですね。
調べたところ、もし「教育無償化」が実現した場合に恩恵が一番大きいとされているのは低所得者ではなく中高所得者であることがわかりました。
なぜかと言うと、低所得者には既に保育所や幼稚園の利用料の負担が軽減されているからです。
そのため、もし国が無償化したところで今まで通りと言うわけです。
しかし、他の世帯にも無償化が適応されるとなるとお金に余裕のある家庭も無償化の対象になるため、簡単に言うとさらにお金に余裕が生まれるということですね。
保育所や幼稚園の利用料は国が基準額を示しており世帯の収入によっては月に10万円を超えるケースもあるそうです。
この件については政府内からもすべてを無料にするのは異論があるとしています。
また、国の子育て支援制度に参加していない幼稚園については国の基準とは別に料金を設定しているそうです。
こういった施設を対象とするとしないかなども今後の論点となるのではないでしょうか。
これまで簡単に紹介してきましたが、これだけのボリュームのあることを年内にまとめることが本当にできると皆さんは思いますか?
教育無償化にかかる費用は?
それでは全ての幼児教育や保育の無償化にはいくらかかるか見ていきたいと思います。
0~2歳:約4400億円
3~5歳:約7300億円
世帯収入が360万円以下の場合
0~2歳:約500億円
世帯収入が680万円以下の場合
0~2歳:約2300億円
所得制限なしの場合は約1兆円かかることになります。
保育システム研究所の吉田正幸代表は教育無償化についてこのようにコメントしています。
「無償化の対象を限定し、浮いた財源は保育士や幼稚園教諭を手厚く配置するなど教育・保育の質の向上に使う方が有効だ」
今は保育士の数が少なく労働的にも大変だということでとても良い案かもしれません。
幼児教育や保育だけでも1兆円以上必要ですので、小学校や中学校、高校、大学を無償化できるのはあと何十年後になるのでしょうか。
日本は、教育無償化などが実現しているオランダや財政難になったアルゼンチンが何故豊かなのかをもっと勉強するべきだと私は思います。
教育無償化のメリットやデメリットは?
果たして、「教育無償化」をすることでメリットはどこにあるのか、またデメリットは何なのかを簡単に見ていきたいと思います。
まず、考えられるのは少子高齢化社会からの脱却であり出生率の改善ではないでしょうか。
子供を成人まで育てるのには最低でも約3000万円ほどかかります。
そのコストがなくなるため出生率の減少を抑えることができると考えられます。
子供が減れば人口も減ります。
人口が減るというのは直接、国の経済も衰退するという意味です。
子供が増えるということはあらゆるものに対して需要も増えます。
そうすると財政も安定して日本全体が活性化するということですね。
出生率の改善だけでなく、特に東京都内で深刻化している待機児童問題も改善されると私は思います。
なぜかと言うと、憲法改正により幼児や保育の無償化が実現するということは全ての子供が保育教育を受ける権利が生まれるため必然的に待機児童がいては憲法違反になるからです。
しかし、問題もやはりあると思います。
まず、子供がいない家庭にとっては必要ない事です。
子供がいる家庭は恩恵がありますが、子供がいない家庭は負担が増えるだけですよね。
また、安倍首相は将来的には大学まで無償化すると公言しています。
これについては、まだまだ問題は山積みですがもし実現した場合はとても経済にとっては良いことかもしれません。
私も友人たちもそうですが、現在は多くの学生が奨学金制度を利用して大学に通っています。
しかし、大学を卒業してから借りた奨学金を払っていかなくてはならずこの借金はかなり足を引っ張っています。
調べによると、奨学金を返せない方がかなりいるそうです。
そうなると、国としても悪循環でしかないと私は思います。
お金を返せないと言うことは、国の借金は減りません。
また、その借金が返済できないことで生活も困窮しますし結婚も考えられません。
そうなると、出生率にも影響してまわりまわって日本の経済も衰退していくということになると私は思います。
現実に私の友人たちも奨学金の返済にかなり苦労しているようです。
ある人は「大学の4年間を無駄にした」とまで言っています。
消費者金融で例えると、100万円ほど借りると最低限の返済を毎月行ったとして、返済できるまでに2年3年の月日を要します。
私は理工学部だったので大学1年間で約120万円ほどかかっています。
4年間で約500万円とすると返済までに何年かかるでしょうか。
もしかすると、結婚してからも払い続けているかもしれませんね。
その金額が無償化するだけでどれだけの経済効果があるのでしょうか。
現在の大学進学率は約50%であり、これが70%ほどに上がると18万人の大学卒業者が増える計算だそうです。
高卒と大卒では年収が違うのは皆さんも知っていると思いますが、生涯年収にすると約7000万円大卒のほうが所得が多いそうです。
大学卒業者が増えるということはおのずと国民所得が増加するということです。
また、海外では多いそうですが一度就職してからもう一度専門学校や大学に通うという人も増えるのではないでしょうか。
そういう社会になると、何をやりたいのか見つける為に大学に進学するのではなく、やりたいことを勉強するために大学に通いなおすことが容易になりより深く知識を吸収することができます。
その知識が将来的に日本の技術に応用されれば日本の経済も活性化しますよね。
教育無償化の財源はどこから?
もし0歳~大学まで教育無償化が実現して大学進学が100%の場合は約5.7兆円かかると計算されています。
この費用が湧き出てくるわけではありませんので、この費用を獲得するためにどこかに負担がかかるということです。
その財源をどこから引っ張ってくるかが今回の焦点ですね。
教育無償化の財源は消費税?所得税?相続税?年金課税?何を増税する?
消費税は将来的にどんどん上がっていきます。
上がっていくと言っても日本の消費税は海外に比べると非常に低いので上がったとしても海外から見ると安い方です。
消費税増税による税収の使い道は今のところ決まっていません。
以前までは、消費税の税収の大半は日本の借金にあてるとしていましたが、その方針が今揺らいでいます。
その税収を教育無償化の一部に使用する可能性が出てきているということです。
ちなみに、消費税を1%上げると2.5兆円の税収が見込めるそうです。
簡単に言うと、消費税2%増税分の税収を教育無償化に使えば簡単に大学まで無償化できるということですね。
もし、所得税や相続税、年金課税などを上げる場合は累進課税となり負担は高所得者になります。
低所得者にとってはありがたいことですが、高所得者はより多く税金を払わなくてはいけなくなるので、反発は予想されますね。
私の知人の話ですが、年収300万円の家庭と年収1000万円の家庭では年収だけ見ると1000万円もらっている家庭のほうがかなり生活に余裕がありそうですよね。
しかし、実際にはそうではないそうです。
1000万円稼いでいる家庭はそれだけ出ていくお金も多いそうです。
結果的には生活もカツカツになる人もいるということです。
そう考えると一概に高所得者が生活に余裕があるとも言えないのかもしれませんね。
まとめ
今回は「教育無償化」についてお話ししましたが、壁の非常に多い案件だということがわかりますね。
また、この無償化は全ての国民に恩恵があるわけではないということも難しいところの一つかもしれません。
まず、待機児童問題が解決できていない時点で「教育無償化」を進めようとするのがおかしいのかもしれません。
今後、安倍首相がどのようにこの「教育無償化」を具体的に進めていくのか注目してみていきたいとおもいます。
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